好調の債務整理

三分野で収益をあげ、プライベートバンキングの10年分の経費は充分稼いでいるという。 プライベートバンキング室4名といっても専業は、証券アナリストの資格をもっプライベートバンカー(担当者)1名と女性アシスタント名、他の2人は兼業で外国為替と信託のプロで、それぞれ資産運用や税務の知識で担当者をサポートする仕組みになっている。
顧客を開拓するのは社長と担当者であり、顧客に常時接するのは担当者だけである。 この形をみる限り、Nのプライべートバンキングの進め方は、スイスやアメリカのブラウン・ブラザーズ・ハリマンなどの伝統的なやり方に似た方向のように見える。
しかし、新規開拓の方法でアメリカのメリルリンチなどが進めている、新規公開会社のオーナ一一族の資産管理を獲得するという引受業務との「相互売込み」といわれる証券会社系列の信託銀行としてもっとも効果的な「近道」を利用していないとは誰も思わないであろう。 ある信託銀行のOBはN信託のプライベートバンキングにふれて「Nは欧米のプライベートバンキングを充分に研究して、長期的視野で、優秀な人材をはりつけて、無理のない方法でやっている。

あれは本気だよ。 N信託銀行にはプライベートバンキングの土壌がある」と言っている。
首相の諮問機関である、経済審議会の行動計画委員会の金融作業部会が97年10月にまとめた「我国金融システムの活性化のために」から、証券会社に関係ありそうな項目を抜き出してみる。 ()内は実施すべき年度中を示す。
いずれも証券会社にとって大変な挑戦で、ある。 ・銀行、証券、信託、保険の業態別子会社の業務分野規制を撤廃する(97)・保険、銀行、証券などの子会社方式での相互参入を業務範囲の規制なしで認可する(97)・投資信託、保険商品など銀行窓口販売や、通信販売に関する規制を緩和、撤廃する(97)・デリパティブ市場の育成とリスク管理体制の整備の促進(97)・私募投信の解禁(97)・金融持株会社の解禁(97)・有価証券取引税の撤廃等証券税制の抜本的見直し(97)・有価証券売買委託手数料の完全自由化(99)・証券取引法の抜本改正(99)・資産管理・運用サービス業の導入(99)「資産管理・運用サービス業の導入」は「ファイナンシャルプランナー」の制度を念頭においている。
これが実現すると、いよいよ日本でも欧米なみの独立した「プライベートバンカー」や「ファイナンシャルプランナー」が生まれることになろう。 また「証券取引法の改正」で、アメリカの「ラップ・アカウント」が導入されれば、証券界にとっては画期的な起死回生策になると業界は期待している。
上記の規制緩和策が実現するまでは、まだ好余曲折もあろう。 しかし、金融市場の自由化は欧米をはじめ世界的な潮流であり、日本の金融、証券界は自由化の洗礼を受けなければ世界の競争には生き残れないビッグバンで証券会社が一番大きな影響を受けるのは株式委託手数料の自由化であろう。
株式の売買委託手数料は85年から90年にかけて4回にわたって守|き下げられた。 「ビッグバン」の行動計画によれば、98年4月から自由化が一段とすすみ、手数料自由化部分を5000万円超まで引き下げられる。
さらに、1999年末には完全に自由化されることになっている。 完全自由化されれば、果たして欧米のように市場が活性化するのか。
活性化と引き換えにアメリカのように証券会社の合併、吸収が続出するのか、イギリスの金融証券大改革(ビッグバン)のように、マーチャントバンクや証券会社が内外の大手銀行に買収、あるいは傘下に組込まれてしまうのか。 背景もきびしい。
証券市場は長い間低迷しており、投資家の市場離れは続いている。 証券会社の体力は年を追って低下している。
そういう中で98年度には、証券業務は免許制から登録制に移行し、生保や大手商社などの新規参入が始まる。 99年度には銀行系の証券子会社はすべての業務規制が撤廃され、株式も取り扱える。

一方でbはすでに外資系証券会社は法人など大口客に着々と勢力を拡大している。 日本ではなにが起きるか。
大方の意見では、現在、株式を扱っていない銀行系以外の、既存の証券会社、特に中小は減収という大きな打撃を受けることは識者の一致した見方である。 準大手証券会社の営業収入に占める株式委託手数料の割合は、50%を超えているところが多い。
大手でも完全自由化になれば6割の減収になると見ている。 中小証券会社の整理続合、廃業、人員整理、続出ということになるのであろうか。
アメリカでは株式委託手数料が完全自由化された1975年以降、わずか4年弱の聞にニューヨーク証券取引所の一般投資家を対象とする会員証券会社は56社も減少した。 これは会員(約370社)の15%にも相当する。
イギリスでも1986年の「ビッグバン」で、多くのマーチャントパンクや証券ブローカーが内外の大手銀行に買収され、吸収されたり、子会社化して、現在も独立を保っている大手は、マーチャントバンクのシュローダー、フレミング、証券会社のカザノプなど数社といわれている。 日本の証券会社は一般に固定費が高い。
中堅証券では合理化による経費の削減に取り組んできたが、効果は低迷する株式市場に消されてしまっている。 総費用に占める人件費は米国の34%に対し、40%になる。
日本でも手数料を自由化すれば5社に1社は消える、あるいは半減する、と予想する人もいる。 一方で合理化をさらにすすめ、一方では株式手数料に代る収入源を見っけなければならないのは至難の業である。
自由化に前向きに対処する考えもある。 N証券など大手は営業を手数料収入第一主義から資産管理型業務へ転換させる、と方針を出し、すでに動き始めた。

アメリカの証券界の「証券総合口座」や「ラップ・アカウント」の成功を念頭においている。 プライベートバンキングは典型的な資産管理業務であることも当然理解している「ファイナンシャルプランナー」を育成して、企業オーナーの事業承継や相続対策支援など、公開業務に並行して証券分野でのニュービジネスの開拓にも熱心である。
一部には「株式ミニ投資」で新規口座を飛躍的に増やした、という証券会社もある。 また、アメリカで流行の「投資クラブ」の推進にも力を入れている。
ただどちらも投資家の底辺拡大には役立つが、手数料収入の増加にすぐには結びつかない。 インターネットを使ったサービスは各社参入している。
アメリカの例からみると、今後インターネットを利用したコストの安い「電子取引」が、証券界にとって新たな脅威になる可能性もある。 証券大手三社はすでに、96年春に兼業が認可された「財務コンサルタント」業務を開始しており、中堅証券会社もこれに続く動きだ。
しかし、証券会社にとって「財務コンサルタント」ビジネスが手数料に結びつくには時間がかかり、軌道にのせるのは容易ではなかろう。 証券会社は「商品」を売るのは得意だ、が「人」を売り込むのはあまり得意ではない。

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